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未来教室 第6回 ”人に伝わる文章の書き方” ~フリーライター 国富由紀さん~2022.11.25 Update

未来教室 第6回 ”人に伝わる文章の書き方” ~フリーライター 国富由紀さん~

ゲストスピーカー

~フリーライター 国富由紀さん~

内容

 2022年11月25日に、3期アスエコ未来教室第6回が開催されました。
 第6回の未来講師は、フリーライターの国富由紀さんです。
 

アスエコ未来教室とは?

 アスエコ未来教室とは、公益財団法人岡山県環境保全事業団の環境学習センター「アスエコ」が行なう、中学生向けの6か月間の教室です。
 各回ごとにゲスト講師を招き、講師の方が取り組んでいる活動や、その中で感じること、考えたことについての話を聞きます。

 詳しくは、以下のサイトをご覧ください。

アスエコ未来教室|公式ページ  中学生向けSDGs学習 公益財団法人岡山県環境保全事業団環境学習センター「アスエコ」が運営する中学生向けのSDGs学習教室です。登録制のため、学校 www.kankyo.or.jp
 

活動の内容

 今回の活動は、以下の通りです。

1.チェックイン
2.ゲストトーク
3.個人ライティング①
4.グループワーク、発表
5.個人ライティング②
6.発表
7.フィードバック、修了式

 

 

 いよいよ、第3期最後の未来教室。
 チェックインでは、今までの講義や未来講師についてのふりかえりを行ないました。
 社会の変化スピードは早く、将来の予測がきわめて難しいのです。
 そのため未来教室では、いろんな人に会い、彼らの経験を自分に置き換 えたり、近づけたりしながら考えます。

 第6回までに、さまざまな経験を持った未来講師に会ってきました。
 今までの未来講師に共通しているのは、「講師も中学生だった頃があって、今のみんなときっとそんなに変わらなかったこと」と「扉の前に立った瞬間があったこと」の2つです。

 未来にわくわくするために、未来教室で経験したことを第6回の時間を使ってアウトプットし、考えたことを形にして残します。

 第6回の目標は、以下の3つ。
  ・グループで実現したい10年後の世界を話し合って決める
  ・仲間と発表を行ない、みんなに伝える
  ・個々で未来教室を振り返り、今の気持ち、考えを整理してみんなに伝える
 

 未来教室の五か条を復習する中で、「第5条 一緒に」を大切にする時間にしよう、とかっしー先生から話がありました。
 誰か一人がリーダーなのではなく、みんながそれぞれにリーダーとしての役割を持っています
 自分なりのリーダーシップを発揮できるようになることも、第6回での目標でした。
 

ゲストトーク

 

 第6回の未来講師は、フリーライターの国富由紀さんです。
 国富さんは、第5回までの未来教室で中学生が提出していたレポートに目を通し、一人一人にコメントを書いてくれています。
 人に伝わる文章を書くにはどうしたらいいか?ということについて、ライターの視点から教えてもらいました。
 

未来講師について

 

 国富さんの仕事は「ライター」です。
 ライターという仕事は文章や言葉を扱い、その分類も細分化されているため、専門的な記事を書くジャーナリストとは異なると話します。
 国富さんは、Web上で完結するよりも、実際に相手と話をしながら進めていくものが好きだそうです。
 また、地域に貢献できる仕事がしたいと思っていると教えてくれました。
 

なぜ未来教室でライティングの話をするのか

 

 未来教室では、SDGsの考え方に基づいてさまざまな大人の話を聞いてきました。
 ではなぜ、未来教室でライティングの話をするのか。
 その問いについて、国富さんは「文章は書けないよりも書けた方が楽しいし、自分のやりたいことを実現するためにも必要だから」だと話します。

 コロナ禍以降、さまざまな場面でオンラインでのやりとりが増えており、それに伴って文章でやりとりをする機会も増えてきました。
  文章でやりとりをする上では、文章を書く能力が高い方が、楽しくコミュニケーションをとることができます。

 また、自分がやりたいことを実現しようと思うと、時には人に協力してもらわなければなりません。
 どうやって動くのか?どうやったら実現できるのか?という自分の考えを人に伝える際には、言葉で説明することが必要です。
 文章を書く上で、いろんなことを考えなければなりませんが、その中でも「疑問や批判を持って考え、人に伝える手段を持つ」ことが大事だと、国富さん。

 医学系の研究会での質問の場面を例に挙げて、説明してくれました。
 国富さんが議事録をまとめるために見た研究会では、発表を行なった研究者へ質問をする際に、まずは相手への尊敬の念を伝えたそうです。
 「こんな発見ができてすごい!よく気づきましたね!」と相手に対しての尊敬を示してから、「ところで、この部分は……」と質問をすることで、質問を受ける研究者も、きっと質問に対して腹が立つようなこともなかったのでしょう。

 ここで質問者が頭ごなしに発表の内容を否定してしまうと、発表を行なった研究者が傷ついてしまうかもしれません。
 国富さんはそのやりとりを見て、「考えを人に伝えるために大切なこと」を感じたそうです。

 文章を書くためには、どのように伝えればいいか、相手にどのように伝わるかを考えなければならないのです。
 「考える」という行為自体は、日常的に行なっています。
 国富さんは、自身の好きな文を引用しつつ、「考えること」について話してくれました。
 

考えることは思考の変換作業

 国富さんは、発表の中で以下の言葉を引用しました。
 

「昨日の会話は消えてしまうが、昨日の文字は眼前に残っている」

(池澤夏樹『日本語のために』より)

 

 私たちが会話を記録するためには、頭で記憶し、それを文章に書き起こします。
 文章に書き起こすときに、頭の中では無意識のうちに内容を編集し、わかりやすく伝わるようにしているのです。
 このことを、国富さんは「思考の変換作業」と呼びます。

 思考の変換作業をうまく行なうためのトレーニングとして国富さんは、少し意外な方法を提案しました。

 「何か本当に伝えたいこと、やりたいことがあるとき、それを広い範囲に伝えたいときは、自分の名前と写真で、SNSのアカウントを作ってください。ただ、皆さんの年齢ではそれが危険なときもあります。でも、匿名のアカウントを使うときも自分の人格をアカウントにきちんと植え付けてください。」

 SNSをうまく使うことは思考の変換作業や文章の編集の練習になるそうです。
 自分の素性を明かしてSNSを使うと、汚い言葉や誹謗中傷などの危険な言葉を使わなくなります。
 たとえ匿名だとして、アカウントに自分の人格を植え付けて発信すると、「これは自分の言葉である」という意識が生まれ、おのずと言葉の選び方は変わるのです。
 

文章が書けない?

 

 文章が書けないなあ、と思うのは、考えられていないからだ、と国富さん。

 東田直樹さんという自閉症の作家について取り上げ「会話はできないけれど文章を書いて本を出せる人がいる。これは、頭の中でいろんなことを感じ、考えているからだと思います」と話します。

 文章を書く上では、「また、もう一回、もっと」を大切にしてほしい、と教えてくれました。
 また、5W1Hと呼ばれる視点に一つ加え、6W1Hの視点を持って文章を組み立てていくと、自分に与えられた原稿用紙はすぐに埋まるのではないか、と話します。

 6W1Hとは、以下の視点のことです。

What:なに
Where:どこ
Who:だれ
When:いつ
Why:なぜ
Want to:〇〇したい
How:どうやって

 

 この視点を持って、自分について振り返り、ライティングを行なってみよう、とゲストトークは締めくくられました。
 

グループワーク

 

 「グループ内で、実現したい10年後の世界を決めてください。
 これは、第6回未来教室で行なわれたグループワークのお題です。

 グループでお題について話し合い、一つの答えを導き出します。
 その答えはグループの誰か一人のものではなく、みんなの考えを繋ぎ合わせていったものです。
 「私が思う理想の世界」と「みんなが思う理想の世界」を繋ぎ合わせて考えることこそ、SDGsなのではないでしょうか。
 今回の未来教室で、小さなSDGsを実現するのです。

 考えることは、①実現したい世界とその理由、②実現する上でのハードル、③そのハードルを乗り越え実現するために必要なこと、どんな人がいればいいか、の3つでした。
 グループで考えたことを、自分の言葉で発表する。
 自分の言葉に共感してもらうためには、「自分が何を考えているか」と「それはみんなも考えていることらしい(だから実現したい)」という軸が必要です。
 グループワークではただ答えを導き出すだけではなく、思考や発表の練習も兼ねています

 さまざまな切り口から、実現したい10年後について考えます。
 その中には、過去の未来講師から聞いた話を参考に、自分の考えを膨らましていく中学生もいました。

 

 

グループでの発表の内容をまとめて、紹介します。

人それぞれの幸せを大切にできる、平和な世界
 幸せの定義は人によって異なるけれど、人それぞれの幸せを大切にされる世界が実現されるといいなと思っている。
 変化が怖いことでも、自分で考えて頑張れるように。
 実現のために、社会は人との関わりで成り立っているから(第3回    
 山下リールさんのお話より)、人と関われる場を作る。
 未来教室のように、学校では学ばない大切なことを学べる機会を作りたい。

今の自分をありのままに表せる世界
 自分を知ってもらって、いろんな人と繋がりたい。
 今の自分をありのままに表せないと、学歴や肩書きだけで人となりを判断されてしまう。
 自分に自信が持てないことがハードルになってしまうから、乗り越えるために、違うことを当たり前にしたい。
 未来教室のように、自分の考えを積極的に発信できる場所を持って、自分だけの世界を作れるようにしたい。

簡単なことから実行できる世界
 一人一人が環境のことについて考え、バックキャスト思考で問題について考えてほしい。
 一人一人の意見が違うことがハードルになるから、SDGsのような    
 共通の目標を立てることが必要だと思う。
 またその目標を浸透させるために、SNSで環境に関する自らの意見を発信したり、お菓子のパッケージで環境問題について取り上げ、気軽に環境について考えられるようにしたい。

世界中の人のことを理解し、それぞれの幸せを実現できる世界
 今の日本は先進国で、発展途上国のことを「幸せじゃない」と思ってしまうけれど、本当に幸せじゃないのかはわからない。
 現地でどんな生活をしているか知ることが必要だと思う。
 世界規模で考えなければならないことはハードルだから、まずは自分が住んでいる地域について考えてみるところから始めたい。
 「大人が驚くようなアイデアを持っている子どもたち」をメンバーに、自分から相手に関わりに行き、身の回りに広げていきたい。

 

「私が思う理想の世界」と「みんなが思う理想の世界」を繋ぎ合わせて考えること

 中学生の考えや発表に、アスエコスタッフ、大学生スタッフもとても驚きました。
 今までに聞いた話を絡めて考えたり、子どもがリーダーになる未来を想像していたり、SDGsのような目標を新たに考えようとしている人がいたり……私たちが考えている以上の10年後を、中学生は想像していたのです。

 グループワークへのフィードバックとして、かっしー先生からは「未来教室では考えたことが正解」、と話がありました。
 社会に出ると、相手に伝わったことが正解になります。
 一人で考えた正解でも、人に伝えるときには伝わり方によって正解が変わってしまいます。
 少しでも多くの人に正しく伝え、納得してもらうためには、対話が必要。
 リーダーになることを恐れないためには、自分らしさや、自分に自信を持つことが不可欠なのです。
 

個人ライティング、発表

 

 個人のライティングでは、未来教室に参加する前と後で変わったと思うことについて文章を書き、発表しました。
 ライティングの際には、アスエコスタッフ、大学生スタッフだけではなく、国富さんにもサポートに入ってもらい、中学生のアウトプットのお手伝いを行ないます。

 

  文章を書くのが得意な人もいれば、苦手な人もいます。
  それでも、みんなしっかりと考えながら、筆を進めました。

 
 

 そして、文章を書いた内容を、発表していきます。
 発表の際には、第3期未来教室で未来講師としてお話をしてくれた未来さん(第2回)、山下リールさん(第3回)、上野宏一郎さん(第5回)がZoomで参加してくれました。

 

 発表の内容は、それぞれの参加者の心の中に置いておいてほしいと思っています。
 自分の内面をさらけ出して、未来教室を通して自分がどのように変わったかを、素直に話す姿はとても誇らしげに見えました。
 未来教室という場で同じ話を聞いても、そこから一人一人考えることは異なり、一人一人違う成長をしていったのです。

 発表後には、参加していた人たちからのフィードバックがありました。

○山下リールさん
 ・みんなが成長したことを実感しているんだなあ
 ・「中学生が働くときに面白い社会にしとかんと!
 ・他人のことを思いやるのは、未来の自分を助けること
 ・これ(未来教室)が最後ではなく、また会える時があればいいな

○未来さん
 ・心の筋肉を使った半年間だったのではないでしょうか
 ・不安な時、一歩踏み出せないときはある。そのときは心に寄り添ってあげてほしい
 ・中学生のみんなが伝えてくれた思いで、勇気をもらえた人がいるかもしれないし、頑張ろうと思える人が広がっていくかもしれない
 ・次に会ったときにはまたゆっくりお話ししたい

○上野宏一郎さん
 ・「すばらしいな」と思った
 ・未来、先はまだまだ長いので自分の気持ちに正直になってほしい
 ・チャレンジに失敗はつきものだけど、そこからも何か生まれるし、チャレンジしない限り学ぶこともできない
 ・また会いましょう。岡山ビューホテルにも遊びに来てね

○国富さん
 ・自分の内側をしっかり話せるんだから文章書けるようになるよ!
 ・次世代のリーダーになってほしい。リーダーには「統率力」と「共感力」がいる
 ・考えを言葉にする、文章を書く機会はこれからも必要
 ・気がついたときに言葉にして書き留めてみることを頭の中に置いておいてほしい

終了証の受け渡し

 最後に、てっちゃん先生から未来教室修了証と記念品のトートバッグを手渡し、第3期未来教室は幕を下ろしました。
 

おわりに

 第3期未来教室は、すべてのプログラムを終了しました。
 中学生のめざましい成長に驚くとともに、その姿に毎回勇気をもらっていたように思います。
 年齢や経験にかかわらず、相手のことを尊敬し、学び合うことができる場であることを再確認しました。

 筆者であるわたしは基本的に中学生と直接関わることはなく、このレポートを通して自分の受け取ったものを伝えてきたつもりです。
 少しでも伝わっていたら、これ以上うれしいことはありません。
 第6回のライティングの時間に「レポート読んでいます、どうやったらあんなわかりやすい文章が書けるようになるのか教えてください」と聞いてくれたのが本当にうれしかったです。
 本当に、本当に、ありがとうございます!!!

 アスエコ未来教室についての情報は、ホームページで確認できます。
 詳細は以下のリンクをご確認ください。

アスエコ未来教室|公式ページ  中学生向けSDGs学習 公益財団法人岡山県環境保全事業団環境学習センター「アスエコ」が運営する中学生向けのSDGs学習教室です。登録制のため、学校 www.kankyo.or.jp

 約6か月間、ありがとうございました!